まず、配電線って?

配電線とは、発電所から送電線によって、遠方から運ばれてきた高電圧の電気を変電所内で6600Vに降圧した後、直接需要地に向けて張り巡らされた電線路を示している。
また、配電線は送電線とは違い、支持物に、柱上トランス(柱上変圧器)が設置されているのが特徴である。次いで、支持物の種類は、鉄塔ではなく鉄筋コンクリート柱を使用したものが大半を占めている。
しかし、文章だけではわかりにくいので、まずは初めから、発電、送電、配電の全体像を図とともにまとめあげてみようかと思う。

<発電所、変電所、架空送電線の図>

まず、火力発電所や水力発電所等で発電された電力は、発電所構内にて電圧が昇圧され、鉄塔に張られた高電圧の送電線に乗せられる。
その後は、1次変電所や2次変電所、配電用変電所を通り、最後にある配電用変電所より給電線を引っ張り出し、配電線(配電幹線)を立ち上げて各需要家へ配電されている。
その中で、最終出番である配電線は、配電用変電所から各需要家(負荷)へ電気を配るために張り巡らされた電線路を示している。(引き込み線は除く)
なお、給電線については、配電用変電所から各ある配電幹線の立ち上がり柱までの区間を結んでいる電線路を示しており、この電線路には変圧器などの負荷は一切設置されない。
ちなみに、東電管内の給電線は地中を通ったものが多く、架空線のものは見たことがない。

大元の昔は、山間の水を利用した水力発電が主流で、火力は水力発電所の渇水期のための予備といった時代もあった。
その当時は、小規模水力発電も流行り、水力発電所から直接配電線が施設され、配電されていた頃もあったが
電力需要が増加した近代では、次第に需要地(都市部や街等)から遠い場所に水力発電所が造られ
また、発電所から都市部や市街地までの距離も増大したため、送電線の電圧も益々上昇した。この時は同時に、都市部へ向かう送電線路も増えた。
さらに、送電線については、一時期は1000kV送電線路も実用化されるような話も持ち上がったが、結局あれは実用化はされていない。
なお、1000kV設計の送電鉄塔は、実在している。
※図中に、7000V以上の高電圧で電気を送るのが送電線の役割と書いてしまったが、基本という意味合いで、とらえて頂きたい。
送電線の中には、7000V以下のものも少なからず存在する。

配電線の施設手法については、空中に電線を張る架空配電線と地中配電線があり、前者の架空配電線についての詳しい説明を図で示せば下記の通りとなっている。(図の説明は、東電管内の配電設備の例となる。)
なお、地中配電線については、個人的な趣味の範囲内では全く興味がないので、その説明は割愛させていただく。

<架空配電線の図>

配電用変電所から引っ張った給電線は、配電用変電所の目の前や付近にある配電柱で自動式区分開閉器(配電自動化システム)を設けながら立ち上がり、その後は配電幹線により需要家付近へ向かう。

(※図中に一部、引き込み線も含む。引き込み線とは、配電線より分岐して需要口に向かっている電線路を示す。なお、上記図中による引き込み線は黄色い矢印の区間となる。)

<送電線と配電線の違い>

まず、2つの大まかな違いを示せば、各需要家(負荷)に接続されているか接続されていないかの違いである。それから電圧も絡む。
送電線については、電圧は基本的に40000V以上のものを示し(少数の例外あり)、支持物は主に鉄塔を使い、発電所から変電所間、変電所から変電所間といった遠距離へ電気を送るために作られた電線路を示している。
そのため、送電線は基本的に各需要家(負荷)には直接接続されていない。
(但し、少数の例外があり、154kV以下の送電線の場合は、浄水場や大規模工場等の大口需要家に直接接続されることがあり、この限りでない。なお、その場合はもちろん使える電圧に落とせるよう構内に変電所が用意されている。)
一方で、配電線は町中にある一番身近なものであり、電圧は40000V以下のものを示し、支持物については主に鉄筋コンクリート製の配電柱を使い、配電用変電所から各需要家へ電気を配るために張られた電線路を示している。
また、同時にこれが最終的に各需要家(負荷)に接続されている電線路となり、高圧需要であれば高圧引き込み線を伝って高圧需要家へ、低圧需要であれば低圧引き込み線を伝い各需要家(負荷)に配電されている。

<配電線に一緒に架かる小規模な送電線>

配電線には、時にはトランスなどの負荷が全くない、33000V及び22000V以上の送電線(特別高圧線)も一緒に施設されることもある。
そうしたものは、配電線のこう長が著しく長くなるような箇所で採用されている。
普通の6600Vの高圧配電線を長距離に張れば、当然それなりに電圧降下が発生する。
普通の配電線(6600V)よりも少し電圧の高い特別高圧線を需要地に近いエリアまで普通の配電線に沿って張り、需要地に近くなった現地で普通の高圧配電線に降圧させることで、長距離による電圧降下は多少軽減できる。
他には、普通の配電線に沿って送電線を張るわけであるから、大きな送電鉄塔(送電塔)を建てるよりもコストがかからないというメリットもある。
例をあげれば、山梨県の鳴沢村があげられる。
また、特別高圧線は、工業団地など大口需要家が数多くあるところでも施設されることがある。

CVTケーブルによる特別高圧線が架かった配電柱の例
こちらは通常の6.6kV仕様のCVTケーブルよりもやや太めで、ケーブルはねじれていないかつ、分岐管や開閉器、がいし類の絶縁体もがっちりしているのが特徴
なお、昔は羽田空港の方でも、架空線路よる特別高圧電線路を沢山見た記憶があるが、近年は安全上のためか、そういったものは完全に廃止されているようである。
今そのエリアでは、明らかに普通の配電線の上に架空線路による特別高圧があった痕跡ぐらいしか見られない。
※なお、東京電力管内以外では、今でも普通に、配電線と一緒に架空線路による特別高圧線路は施設されているところがあるので、そこは注意願いたい。

<架空配電線の各電圧等の説明>

架空配電線の種類については、高圧配電線(6600V)、低圧配電線(200V/100V)に大別される。
(※ここで高圧とは、交流の場合は、特別高圧は7000V以上。高圧は600Vを超えて7000V以下のもの。低圧は60Vを超えて600V以下を示す。)
配電柱を一番上から見ていくと、最上部に架空地線(これは配電線への直撃雷、誘導雷対策として施設されていたが、近年はないところが多い。)、その下段に高圧配電線(6600V)、さらにそのすぐ下に低圧配電線(200V/100V)が通っている。
その中で、上の方によく張られている3本の黒い電線が高圧配電線であり、三相3線式(3本の電線を使って電気を送り込む)が主流となっている。
一方で、高圧のすぐ下を通っている低圧配電線については、低圧動力線と低圧電灯線に種別され、三相3線式の低圧動力線が200V、次いで、低圧電灯線の方は昔は単相交流2線式(100Vしか使えない)が基本だったのだが
近年では一般家庭でもエアコンやIHに200V機器の使用が増えたため、低圧電灯線については今は単相3線式(100Vと200Vの両方の取り出しが可)が主流となっている。
さらに、その中では必ず、低圧に高圧が侵入したときのことを考えて、変圧器等のアース等に接続した接地側電線(中性線、アース線)が施設されているわけだが
これについては、低圧動力線と低圧電灯線のものと一緒に共用されることから、架空共同地線とも呼ばれている。
なお、変圧器の結線等を含んだこれらについての詳しい説明は、次のページで紹介している。

基本的な架空配電線が揃った配電柱の例
一番上から1本の架空地線(グランドワイヤー、避雷線)、3本の高圧配電線(三相3線式の6600V)、5本の低圧配電線(三相3線式の動力線200Vで接地側電線は電灯線と共有,電灯線は上記写真の例だと単相3線式となるから200V/100V)の順

ここで再び高圧配電線の説明に戻る。
小規模な工場が全くない住宅だけが多いエリアについては、単相2線式の高圧配電線(2本の電線を使って電気を送り込む)を張った配電柱も実在している。

小規模な工場が全くない住宅の多いエリアにある、単相2線式の高圧配電線が張られた配電柱の例
なお、手前側には、住宅で使える電圧に落とせるよう、電灯用変圧器から単相3線式の低圧配電線(100Vと200Vが使える)を取り出している配電柱が写る。

また、変電所からの立ち上がり箇所では、合計6本の高圧配電線が張られている箇所もあるが、あれは遠方エリアでの配電用と近場エリアでの配電用とでそれぞれ振り分けられているためである。
振り分け内容については、2回線あるうちの最上段回線が遠方エリア用で、その下段回線が近場エリア用の1回線となっている。
なお、写真にその説明を明記すると以下の通りとなる。

配電用変電所からの立ち上がり柱付近で確認することができる、合計6本(2回線)の高圧配電線が張られた配電柱の例
基本的には、2回線ある内の最上段回線が遠方エリアで配電されていく遠方エリア用で下段回線は近場で配電されていく近場エリア用と決まっている。
(但し、一部では、重要施設や交通信号機の非常電源用に最上段回線を設けている設備も見かけている。)

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